西田さんの教育関連質問3連発、あと2つの質問も取り上げます。
1問目はこれです。
『2014年第3回定例会(9月議会) 西田 武史(無所属クラブ)の質問より 小中一貫校編』
道徳教育についてですが、
そもそもこの教科化は、2011年の大津市の中学生自死事件など学校の深刻ないじめ問題が注目されて、道徳教育の不十分さが背景にあるとも論じられたのが発端。
道徳の教科化は、ナショナリズム的愛国心教育が志向された06年の教育基本法改正とともに、戦後教育の改革に熱心な安倍晋三首相の宿願ともいえます。
首相直属の教育再生実行会議が、いじめ防止策の必要性と絡めたり、文科省の有識者会議も、「道徳性は極めて多様な心情、価値、態度などを前提としているか ら数値による評価は不適切」として、点数ではない記述式の評価を導入する案を打ち出し、中教審(中央教育審議会)が異論を唱えにくい内容で教科化を後押し するなど、その手法には周到さもうかがえます。
教科化は、2018年度にも実施の見通しですが、国が今年度、教科書検定基準を改め、「愛国心」を養うなどとした改正教育基本法の目標に照らした審査を強めているのを見ても、安倍政権の意向に沿った、教科書によって、特定の価値観が押し付けられる危惧があります。
しかも、教科化されても、いじめが減り、道徳心を養えるわけではありません。
今津孝次郎 名古屋大学名誉教授(教育社会学など)は、『学校と暴力』で、文科省の「いじめ件数調査」は、過少申告が考えられるが、傾向はつかめるとして、解決策も含め、こう書きます。
小学校高学年から件数が増加し、中学校でピークに達し、高校になると減少する。
これは独り立ちの課程で、不安定さに伴う攻撃性による特徴的な問題行動を帯びやすい思春期を、通り過ぎていく時期と重なっている。
解決策としては、学校の対面ばかり気にするのでなく、表面的な対策ではなく、善も悪も持ち合わせる人間そのものを見つめる深いまなざしを、まず大人たちが培うことではないか。
具体的には、毎年の恒例行事として、新たな学校構成員がそろう春の時期、校長のリーダーシップの下に、学校独自のポリシーを、全教員が知恵を出し合って「全校基本政策」案を出す。次に、それを文書として策定する際に、生徒や保護者を含む、学校の全構成員が参加する。
それに基づき、個々の学級内のルールも生徒に明確に伝え、クラス全体で取り組む課題と各人が取り組む課題を提示。
保護者との交流広場として、学級通信を毎週発行することなどで、学級崩壊に近かったクラスも立て直され、いじめもなくなっていく。
(引用終わり)
西田さんの方向性は、これとは全く逆行していると言ってもよいでしょう。
いじめ自死について数字もお知らせします。
1984年度から2010年までの27年間で、文部科学省(文部省)が、いじめが原因の自死としたのは60人(2005年度までは公立学校のみ)。
同時期に報道されたいじめ関連の児童生徒の自死者数は225人(NPO法人ジェントルハートプロジェクト 武田さち子調べ)。
(1974年から2011年までの38年間では246人)
これらについての岸和田市 学校教育課の回答:
いじめによる児童生徒の自死の件数 平成24年度以前はいじめによる自死についての調査がなかったため、データとしては残っていませんが、学校からの報告では、そのような事案は確認していません。
平成24年度以降は、いじめ調査の中に「児童生徒の生命や安全に関わる重大事態」として、自死などの重大事態の件数を計上することになっていますが、現在までのところ計上されていません。
いじめでない児童生徒の自死の件数 いじめでない児童生徒の自死の件数についての調査がないため、データとしては残っていませんが、学校からの報告では、そのような事案は今まで確認されていません。
いじめの認知件数 H22 H23 H24 H25 H26※
小学校 19 27 47 45 6
中学校 24 12 32 29 11
※H26は1学期のみのデータになります。2学期までは現在集計中です。
上のデータは、あくまでも認知件数(学校がいじめを認知し指導を行っている件数)です。
つまり実際にいじめがおこっていても、教員が発見していない、本人や 保護者、周囲の児童生徒等からの相談や訴えがない等の理由で、学校が認知していない可能性は、現状では拭いきれません。
ただし、今までもいじめについては過小評価せず指導してきていますが、特に大津の事件があった平成24年度以降、軽微なものであってもいじめとして認知し指導しています。
その前提となる教員の認知力を高めるために、各校や委員会で研修等も行っているところです。
また本人や保護者、周りの児童生徒等が相談しやすいよう、学校は質問紙による定期的な調査や教育相談の体制づくり、相談しやすい雰囲気づくりにも取り組んでいるため、いじめがおこってしまった場合でも、情報が学校に入りやすい状態になっていると考えています。
(回答終わり)
岸和田市内で大きな問題が起きておらず、なによりでした。
このような背景の下、西田さんが聞きたかった焦点がどこにあるのかわかりませんが、私は安倍首相の進めるナショナリズム的愛国心教育を伴った、『教育勅語』や『修身』を念頭においているのではないかと思えてなりません。
『教育勅語』は、1890年(明治23年)に発布され、『修身』も同時期に教科として、ともに1945年の敗戦まで存在しました。
これがいかに時代にそぐわないかを、国際社会において合意されてきた諸原則で示します。
国際連合憲章(1945)
世界人権宣言(1948)
国際人権規約(1966)
友好関係原則宣言(1970)
子どもの権利宣言(1959)と子どもの権利条約(1990)
平和の文化に関する宣言・行動計画(1999)
このような原則の下、ようやく日本でも、多文化共生や、命の大切さ、人権尊重などが広まっている過程ですが、『教育勅語』や『修身』をモデルとするような、個々の人間よりも国家重視の道徳教育は、時代に逆行するものとして、とうてい認められるものではありません。