短絡的な問題解決に走ると、リスクは自分に戻る  医師不足編

時々書いていることですが、問題解決には、市民がどう問題に向き合い、知恵を出し、汗をかくかが最も重要で、役所や議員に任せて、自分たちは文句だけを言っておけば解決するというわけにはいきません。

そのような市民の姿勢は、行政や議会への無関心となり、目の前の自分だけの問題は解決できても、全体で見ればむしろ悪化する方向へと向かう場合が多い。
これを合成の誤謬(ごびゅう)と言います(経済に詳しくない私が、経済用語を使うのは違和感がありますけれども、社会問題でも使われているので使用します)。

例えば、自分の生活を満足させたいために結婚しない、又は子どもをつくらない。
すると、自分の賃金は自分だけのために使えるので、同じ会社に勤める子どもがいる人よりも贅沢な暮らしができます。
そんな一人ひとりが日本全体で多数となれば、少子化となり、自分の年金も予想額より減ったり、介護の担い手がいなくなったり、街に活気がなくなったりして、社会全体の問題となり、自分にもブーメランのようにリスクが返ってきます。

まさにそれを地で行く問題が、報道されたので紹介します。

<鳥取養護学校>看護師全員が一斉に辞職(毎日新聞) – Yahoo!ニュース
6月8日(月)21時38分配信  【小野まなみ、真下信幸】

鳥取県立鳥取養護学校(鳥取市)で、医療的ケアを担う看護師が不在になり、ケアの必要な児童生徒9人が通学できなくなっていることが分かった。
以前から 要員不足の事情があり、ケアの一部が遅れたことを保護者から批判された看護師6人全員が、一斉に辞職を申し出た。
県教委は看護師の配置や相談体制の不備を 認め、後任の人材確保を急いでいる。
県教委が8日の県議会で報告した。

同校には小学部から高等部までの児童生徒76人が在籍、うち33人がたんの吸引などのケアを必要とする。
看護師6人は非常勤で、5月22日の授業終了後に全員が辞職の意向を伝えた。
看護師の1人は、ケアが数分遅れたことについて、ある保護者から威圧的な言動を繰り返し受けたと訴え、他の5人も不安を募らせていたという。
医療的ケアの必要な児童・生徒は現在、保護者同伴で登校するか、校外のデイサービス施設で教員の訪問授業を受けている。
施設を利用せず家庭訪問を希望しない児童生徒4、5人が授業を受けられない状態という。

野坂尚史校長は「本来は8人の看護師が必要。 一刻も早く人材を見つけたい」と話した。
県教委は「医療的ケアを必要とする児童生徒が増え、看護師の体制 が苦しかったとも聞いている。組織としての受け止めなどが不十分だった」と釈明。県看護協会などに派遣を要請中で、近く学校でのケアを再開する方針という。
(引用ここまで)

ニュースを見た時、まさに医療崩壊と同じパターンだと思いました。
小松秀樹 虎ノ門病院泌尿器科部長の名著、
『医療崩壊―「立ち去り型サボタージュ」とは何か』
を私が読んで問題を知ったのは、発刊後間もない2006年でした。

それから約10年が経っても、同じ問題が繰り返される。
これこそ、行政や議会が、市民に問題周知をし、市民も解決に向けて足を踏む出そうとしていない証です。

もう少し具体例を示します。
救急を「時間外の番人」としか思っていない、多くの住民の不適切な受診行動が、医師のプライドを切り刻み、心を折り、退職へと追い込んでいった例。
「命の砦」3次救急が崩壊寸前 鳥取大で救急専門医が全員退職
2009/2/11 12:21

退職するのは、センター開設時からセンター長を務める八木啓一教授(54)や准教授ら4人。
八木教授は09年2月4日の記者会見で、理由について、 「救急専門医を育てようと頑張ってきたが、様々な問題で辞める部下を引き留められなかった」などと語った。
04年から現在の臨床研修制度が始まり、新人医師が自由に研修先を選べるようになったことも、若手流出を早めた。残った医師も負担が増えて辞めていき、慢性的な人手不足に陥っている。教授が当直することもあったという。

救命救急センターとは、心肺停止など命に関わる患者を受け入れる「3次救急医療」機関で、「命の砦」とも呼ばれている。
同病院によると07年度は年間約1万2965人の患者を受け入れた。
このうち症状が重い患者は約900人で、ほとんどが救命センターにかかる必要がない軽傷患者だった。
八木教授は会見で「救急医を時間外の番人としか思っていない人がたくさんいる」と述べており、患者のモラルのなさも忙しさに拍車をかけた。
(引用ここまで)

病院たらい回し「事件」も同様です。
2007年7月29日、午前2時過ぎ、奈良・橿原市の大型ショッピングセンターで、妊娠中の女性(36)が急激な腹痛を訴え、救急車を呼んだ。
救急車は8分後に到着したが、搬送先探しで9つの病院に断られたあげく、40キロも離れた大阪の病院に向かったが、途中女性は破水し、3時間2分後、病院に入ったときには、女性はすでに流産していたというもの。

2008年10月4日には、東京墨田区の妊婦たらい回しで、7病院が拒否し、赤ちゃんは無事生まれたものの、妊婦は3日後に死亡しています。

今回は、これを医師不足の観点から見ます。
医師を減らしていった国の政策
1970 「最小限必要な医師数を 人口 10 万対 150 人 」目標設定
1981(S56)年 琉球大学医学部開設 (最後の医学部新設)
1982 医師数 抑制 閣議決定 「医師については、全体として過剰を招かないように配慮」
1983 吉村仁 厚生省保険局長による「医療費亡国論」発言
1986 医学部入学定員 10 % 削減
1993 医学部定員 7.7% 減
1997 医学部定員 削減 閣議 決定 「大学医学部の整 理・合理化も視野 に入れつつ引き続 き医学部定員の削減に取り組む」
2004 新卒後研修制度開始
2008 閣議決定 「早急に過去最大程度まで増員する」1982年以降初めて医学部生増加7793 人 【168人増】以降増加

医師になるには、医学部6年、初期研修2年、後期研修3~7年かかり、ようやく専門医と名乗れる入口に立ちます(この後、サブスペシャリティ研修、指導医資格研修などが、大学病院ではあります)。

足らなくなったとわかった後で、手を打っても、医師ができあがるのに10年間はかかりますので、自然減もあって、それ以上の間に医師不足は続きます。

介護施設とともに都市部では溢れる高齢者が出るというのは、6月4日に有識者らでつくる民間研究機関「日本創成会議」(座長・増田寛也元総務相)が、
「今後10年で東京など1都3県の『東京圏』の介護需要が45%増えて施設と人材の不足が深刻になる」との推計を発表したとおりですし(これは、政府が言えないことを増田氏が言っているのであって、非常にいやらしい自民党のやり口に怒りを覚えますが)、これは近畿の都市圏でも同じです。

また、医師不足は、
産婦人科、小児科のような臨床医だけでなく、変死体が殺人事件などの被害者ではないかと司法解剖する法医なども不足しています。
研究医不足は、公衆衛生分野や、殺人事件見過ごしなどで、世間に顕在化します。

抗がん剤などの製薬分野の研究開発医では、予算不足から、シンガポールなど海外の癌研究機関へ転職し、そこで製品を生み出す研究者もいます。
これは、教育に日本の税を投入したのに、成果は外国企業の儲けとなっている例です。

先の表のような10年先すら見ない医師養成削減計画は、国会で承認しています。
国会議員は金持ちの権力者なので、救急車たらい回しや医師にかかれないことはありません。
東京なら、虎ノ門や聖路加や慶応に行くのでしょう。

と、ここまで書いて、元維新・現無所属の上西小百合衆議員が、議員宿舎から大阪に戻る必要性があったのか、どのような医療を受けられたか気になったので、聞いてみました。
衆議院管理課によれば、
「衆議院赤坂宿舎だけには医務室があり、24時間看護師常駐ですが、医師や薬剤師はおらず、投薬は、一般市販薬を渡すだけ。」とのことで、診療所代わりにはなりません。

そんな政治家は、「医師は儲け過ぎ」、「医師が足らないのは地域の問題で、日本全体の問題でない」、「医療費で、国家財政が破綻する」などの“キャンペーン”にのって、医師を削減し出します。
先を全く見据えた政策ではありませんから、後にツケが国民に返ってきますが、「医師減らせ!」の声を出し、政治を動かしたのも国民です。

このような短絡的・感情的に声をあげて、そのツケがブーメランのように返ってきた例はいくらでもありますが、医療について、この後もいくつか書いてみます。

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投稿者:

watchdogkisiwada

議会の無駄遣いを正して、府下ワーストに高い国保・介保料の値下げや、子ども・高齢者施策など、市民利益への還元を! あなたの“かかりりつけよろず相談員”としての使命に励みます!! 行政書士としてトラブル予防を、 防災士として防災や防犯を、 柔道整復師として健康について、 ご相談、承ります。 放漫市長と議会が大赤字にした岸和田市政を立て直す!! あまりにもひどすぎる馴れ合い議会がチェックしていない、議員特権や行政の無駄などを、岸和田で初めて私が追及、是正させています。 情報、批判はコメントいただくか、 メールアドレス:kurohata73@yahoo.co.jp 電話:080-6178-6006まで! 岸和田市議や市長らは私の追及に逃げまどっていますが、自民・公明・維新などのネトウヨ政治家だけでなく、共産・民主他どんな議員とも公開討論、受けて立ちます!!

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